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雑談がメインで、ゲームのレビューや文章なんかも書いたりする弥太郎のブログです。
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さて、昨日の誓いどおりに一応更新。
やっぱり戦闘を書くのは苦手だなぁ・・・。

ではどうぞ。





「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
 彼は息を切らして走る。その手には『彼女』が握られている。
(・・・)
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
 今、彼は追われていた。
 『彼女』を手に入れてからというもの、何かに追われ続けていた。
 彼らは反故を狙う賊であったり、貴族の使者だったりする。
 さすがに彼も法術士である。今まで追われてきた者たちは難なく退けてきた。
 だが、「これ」は今までの三下とは比べ物にもならなかった。
 言い表すことの出来ないプレッシャー。
 それがシェロのの周りをねっとりと取り囲んでいる。
 アレは姿を見せていない。姿を隠しつつ追いかけてくるが、まったく居所が掴めない。
 今回ばかりは少々厄介である。
 ふっと彼は立ち止まる。
「もう逃げないさ。誰だか知らないが、さっさと出てきたらどうだ」
 逃げられないことはすぐに分かった。なればこそ、自分の力が存分に発揮できる場所まで『追い詰められ』て来た。
 森の奥深く。周りは鬱蒼と茂った木々に囲まれ・・・地の利を活かすには申し分の無いところだった。
「・・・お前は、それを手にしたことを後悔しないのか」
 その鬱蒼とした茂みから現れたのは、厳格な雰囲気をした僧侶であった。最も、本当に厳格かは、その大きな笠を被って見えない顔からは判別できはしないが。
「へぇ、やっぱりただの三下じゃなかったね。それで、ここまで追いかけてきて僕にどうして欲しいのかな」
 そう言いながらも術式発動の隙をみるが、一歩も動いていないはずのその僧は、その好きを与えてくれそうになかった。
(やっぱりマズイかな・・・)
 しばしの間、沈黙が流れる。その静寂は、腕の立つ武人の間に流れる嵐の前の静けさ。
 それはやがて僧の一言で終わりを告げる。
「お前は、本当に後悔をしないのだな。もう後には戻れんぞ・・・」
「何度も言うな。僕の意思は変わらない」
「そうか。安心したぞ、若造。それでは・・・法具を回収させて頂く」
 法師のその言葉をきっかけに、世界が変質する。
 世界が炎に包まれる。
 対してシェロはただ佇んでいた。
「そう言えば・・・まだ名前を聞いていなかったな。若造、名前は何という」
「お決まりの台詞だけど、名乗るならそっちから名乗ったらどうかな」
「ふん、確かにな。私の名は迦膩慧・・・」
「僕は・・・シェロ=ナネナロだ!」
 瞬間、シェロの周りが爆ぜた。
 背後に気配を感じた刹那、一筋の閃光が走る。
「ちっ・・・」
 それを紙一重で避けながら『彼女』を振るう。すると『彼女』が変質した。
「ほう、初めて見るが・・・それの能力は『変質』か。なるほど確かに厄介だな」
 シェロは顔色を変えずに空を見上げる。
 火の手が彼の周りまで迫る。
「・・・これじゃあちょっと分が悪いかな。しかし・・・」
 シェロが空を薙ぐ。
 それと同時に旋風が巻き起こる。
「ここじゃそれほどの力を出せないけど・・・」
 先ほどの旋風が徐々に強くなる。
 それは彼を守るように舞い上がり、迦膩慧の放った炎を巻き込み出す。
「自然系・・・ふん、アサノスの者か。なるほど」
「今更泣きを見たって遅いさ・・・」
 言うと炎を纏った風が迦膩慧を目掛けて走る。
「ちっ・・・?!」
 迦膩慧が避けようとすると、旋風がいくつもの炎を纏った針となり迦膩慧を襲った。
 風が晴れる。そこには迦膩慧の姿はなく、地面が抉れているだけであった。
「はぁ、はぁ・・・」
 シェロは息を上げて膝を着く。
 魔杖に加えて大掛かりな法術を使ったせいだった。
「これで、暫くは休めるかな・・・」
 シェロは大の字になる。
 空を見つめる。
 さっきまでの緊張は解け、今まで通りの明るい空が広がっていた。
 『彼女』を手にしてから、休む間もなく過ごしてきた。
 やはりこんなことは止めるべきだったかとも思う。
 そうは思うものの、やはり、この出会いは必然でもあったと思う。
 ナナカには迷惑をかけてしまっているけれど、暫くはこの追われる身でいよう。
「・・・!!」
 どろりとした感じが蘇る。
「ゆっくりとしている暇があるのかね、シェロ君」
「あんた・・・生きて」
「根の士を舐めるなよ」
 根の士・・・あの人並みを外れた戦闘集団。
 迦膩慧、そういわれてみればそういう名を聞いた気がする。
 シェロは、終わったと思った。
「ふん、興がそがれた・・・運がいいと思え」
 そう言うと迦膩慧は消え去った。
「ぁ・・・」
 根の士にまで狙われているとは・・・しかし『彼女』を手放すことは出来ない。
「やれやれ、大変になるな・・・」
 シェロは、彼が見逃してくれたことに安心して、久しぶりの眠りについた・・・。
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