雑談がメインで、ゲームのレビューや文章なんかも書いたりする弥太郎のブログです。
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僕を呼ぶ声が聞こえる。
何かが僕を呼ぶ。
遠くから聞こえてきて、すぐに消えてしまう。
その声はか細くて、とても弱い。
だけどこんな声に覚えがある。
――そうだ。なんだ、こんな簡単なことだったんだ。
この声は――。
煉獄の中に彼はいた。
燃えていく小さな村の中、逃げまとう人々の波を、逆行していく。
目的は、見えているんだ。
目指すはたったひとつのもの。それのためだけに、この村は燃やされた。
呼んでいる・・・『彼女』が、呼んでいる。
彼はまるで生きてはいなかった。
ただひたすら『彼女』を目指して彷徨い歩く。ある意味では、既に死人と言ってしまっても過言ではないかもしれない。
ある寂れた家の裏、小さな祠に彼は入っていく。
一歩、一歩、『彼女』に近づく。
『彼女』の目の前に立つ。
神々しい光を放ってはいるが、むしろ彼にはそれがただの虚勢を張っているだけに過ぎないように見えた。
そうして、今まで誰も近づかなかった『彼女』に、彼が触れた。
―0
カムニシュプル王国最高議会、円卓会議。一同は沈黙していた。
その中に、アサノス院の院長、アサノスもいる。
この会議の議題は、先日アサノス院生の一人、シェロ=ナネナロの起こしたとされる、八法具のひとつ、魔杖・咲羅の奪取事件である。
1週間前、何者かにより、魔杖を安置していた北方の睡蓮洞を守る、通称守護者村が炎の海に沈んだ。
「さて、今回の件であるが・・・アサノス院長、何か弁明はあるか」
国王補佐のカンツァロが、沈黙を破り諮問を始める。
「私の方には特に弁明はありません。今回の事件は確かに私の監督が行き届かなかったせいでしょう」
院長たるアサノスのミスと言えばそのとおりである。
容疑者とされるシェロ=ナネナロは、幼い頃に両親を亡くし、行き倒れていた所を彼の妹、ナナカと共にアサノスに拾われた。
当然これは周知の事実でもあった。
院長の息子とも言える立場にあるナネナロの行動は王国中に瞬く間に知れ渡ることとなる。
今回、王国の最高議会たる円卓会議にアサノスが呼ばれた理由はこれだった。
「しかもただの村落の焼き討ちではなく、魔杖が盗まれておる。法具が盗まれる事件など、千年の歴史を持つカムニシュプル始まって以来の重大事件だよ」
「それは承知しております。既に捜索の準備は整えてあります。ただ・・・今回は私も捜索に参加しとうございます」
国王カーシュは、それまで硬く閉じたままだった目を開き言う。
「それは家族を思うが故か、それとも世を思うが故か。どちらにせよ簡単には許可できんよ」
「そのどちらでもない。これが真実ならばナネナロは断罪を受けねばならぬ」
「そうか。そなたがここまで言うのだ。俺に断れる訳もあるまいて」
そう言って王は近衛を呼び何かを囁いた。そうして近衛は円卓の間を退出した。
「今回の件、何か思い当たるところがあるんだろ。それを話してはくれんのか」
「今はまだ確定したことではない。話す時が来れば話そう」
先ほど出て行った近衛が、ものの数分としないうちに戻ってきた。
その手には、人が振るうには少々大きい古ぼけた剣があった。
「これは・・・しかしよろしいのか」
「ふん、相手は法具所持者の可能性が高いのだろう。それを相手に、みすみす友の命をくれてやるほどお人好しではないさ」
そうして剣はアサノスに手渡された。正しき所有者たる彼の元に。
「『時を刻む英知』”妖精”フェアレス。やはりそれを持つのはお前が一番似合う」
そう言って王はにんまりと笑う。
「しかしこれを持ち出しては彼らが黙ってはいないのでは・・・」
「構わんさ。さぁ、さっさと行け。お前と奴らが顔をあわせたらそれこそ厄介なことになる」
王の、応援とはまったくいえないこの言葉を背に、アサノスは円卓の間から出て行った。
「よろしいのですか。あれは教団に対する抑止力でございましょう」
「構わんさ、どうせ俺はアレを使いこなせるのはアサノス以外に知らん。それに、この国には彼らがいるしね・・・」
ふと王は誰からの死角になっていた方に視線をやる。
「あらら、気付いてらっしゃったか」
それは突然にそこに「あった」。現れたのではなく、突然に「あった」のだ。
「まぁアレを簡単に渡すのは驚いたが、今の教団程度なら大丈夫だろう」
さっきからそこに「いた」朱い男は次の瞬間には王の隣にいた。
「これより王都を中心に警備を強化する。王城の警備はこの朱李(シュイ)が指揮を執る。それからハルはいるか」
「ここにおります」
ふと王の前に白い男が現れる。
「至急迦膩慧(かにえ)殿とのコンタクトが取りたい。彼を捜索してくれ」
「御意に」
それはまた一瞬のことだった。
現れた白と朱の男は瞬く間に消えた。
そこにいる者たちは唖然としていた。ただ一人、王を除いては。
「彼らは、『根の士』とは何者なのでしょうか・・・」
「いや、ただの人間だよ。哀れにも人の道を大きく外れてしまってはいるが・・・」
そう言って王は立ち上がり、この部屋から光を遮っていたカーテンを勢いよく開く。
「さぁ・・・また戦が始まるぞ。千年越しの、な」
~あとがき~
ハイ、ものすごく自信ありません。
あと言い訳ですが会話が多い部分は特に苦手なんですよ。どうしても地の文が少なくなってしまう・・・。
色々と説明の無い単語等々ありますが、今後の話の中でやんわりと説明していこうと思ってます。
では駄文ではありますが今後ともよろしくお願いいたします。
何かが僕を呼ぶ。
遠くから聞こえてきて、すぐに消えてしまう。
その声はか細くて、とても弱い。
だけどこんな声に覚えがある。
――そうだ。なんだ、こんな簡単なことだったんだ。
この声は――。
煉獄の中に彼はいた。
燃えていく小さな村の中、逃げまとう人々の波を、逆行していく。
目的は、見えているんだ。
目指すはたったひとつのもの。それのためだけに、この村は燃やされた。
呼んでいる・・・『彼女』が、呼んでいる。
彼はまるで生きてはいなかった。
ただひたすら『彼女』を目指して彷徨い歩く。ある意味では、既に死人と言ってしまっても過言ではないかもしれない。
ある寂れた家の裏、小さな祠に彼は入っていく。
一歩、一歩、『彼女』に近づく。
『彼女』の目の前に立つ。
神々しい光を放ってはいるが、むしろ彼にはそれがただの虚勢を張っているだけに過ぎないように見えた。
そうして、今まで誰も近づかなかった『彼女』に、彼が触れた。
―0
カムニシュプル王国最高議会、円卓会議。一同は沈黙していた。
その中に、アサノス院の院長、アサノスもいる。
この会議の議題は、先日アサノス院生の一人、シェロ=ナネナロの起こしたとされる、八法具のひとつ、魔杖・咲羅の奪取事件である。
1週間前、何者かにより、魔杖を安置していた北方の睡蓮洞を守る、通称守護者村が炎の海に沈んだ。
「さて、今回の件であるが・・・アサノス院長、何か弁明はあるか」
国王補佐のカンツァロが、沈黙を破り諮問を始める。
「私の方には特に弁明はありません。今回の事件は確かに私の監督が行き届かなかったせいでしょう」
院長たるアサノスのミスと言えばそのとおりである。
容疑者とされるシェロ=ナネナロは、幼い頃に両親を亡くし、行き倒れていた所を彼の妹、ナナカと共にアサノスに拾われた。
当然これは周知の事実でもあった。
院長の息子とも言える立場にあるナネナロの行動は王国中に瞬く間に知れ渡ることとなる。
今回、王国の最高議会たる円卓会議にアサノスが呼ばれた理由はこれだった。
「しかもただの村落の焼き討ちではなく、魔杖が盗まれておる。法具が盗まれる事件など、千年の歴史を持つカムニシュプル始まって以来の重大事件だよ」
「それは承知しております。既に捜索の準備は整えてあります。ただ・・・今回は私も捜索に参加しとうございます」
国王カーシュは、それまで硬く閉じたままだった目を開き言う。
「それは家族を思うが故か、それとも世を思うが故か。どちらにせよ簡単には許可できんよ」
「そのどちらでもない。これが真実ならばナネナロは断罪を受けねばならぬ」
「そうか。そなたがここまで言うのだ。俺に断れる訳もあるまいて」
そう言って王は近衛を呼び何かを囁いた。そうして近衛は円卓の間を退出した。
「今回の件、何か思い当たるところがあるんだろ。それを話してはくれんのか」
「今はまだ確定したことではない。話す時が来れば話そう」
先ほど出て行った近衛が、ものの数分としないうちに戻ってきた。
その手には、人が振るうには少々大きい古ぼけた剣があった。
「これは・・・しかしよろしいのか」
「ふん、相手は法具所持者の可能性が高いのだろう。それを相手に、みすみす友の命をくれてやるほどお人好しではないさ」
そうして剣はアサノスに手渡された。正しき所有者たる彼の元に。
「『時を刻む英知』”妖精”フェアレス。やはりそれを持つのはお前が一番似合う」
そう言って王はにんまりと笑う。
「しかしこれを持ち出しては彼らが黙ってはいないのでは・・・」
「構わんさ。さぁ、さっさと行け。お前と奴らが顔をあわせたらそれこそ厄介なことになる」
王の、応援とはまったくいえないこの言葉を背に、アサノスは円卓の間から出て行った。
「よろしいのですか。あれは教団に対する抑止力でございましょう」
「構わんさ、どうせ俺はアレを使いこなせるのはアサノス以外に知らん。それに、この国には彼らがいるしね・・・」
ふと王は誰からの死角になっていた方に視線をやる。
「あらら、気付いてらっしゃったか」
それは突然にそこに「あった」。現れたのではなく、突然に「あった」のだ。
「まぁアレを簡単に渡すのは驚いたが、今の教団程度なら大丈夫だろう」
さっきからそこに「いた」朱い男は次の瞬間には王の隣にいた。
「これより王都を中心に警備を強化する。王城の警備はこの朱李(シュイ)が指揮を執る。それからハルはいるか」
「ここにおります」
ふと王の前に白い男が現れる。
「至急迦膩慧(かにえ)殿とのコンタクトが取りたい。彼を捜索してくれ」
「御意に」
それはまた一瞬のことだった。
現れた白と朱の男は瞬く間に消えた。
そこにいる者たちは唖然としていた。ただ一人、王を除いては。
「彼らは、『根の士』とは何者なのでしょうか・・・」
「いや、ただの人間だよ。哀れにも人の道を大きく外れてしまってはいるが・・・」
そう言って王は立ち上がり、この部屋から光を遮っていたカーテンを勢いよく開く。
「さぁ・・・また戦が始まるぞ。千年越しの、な」
~あとがき~
ハイ、ものすごく自信ありません。
あと言い訳ですが会話が多い部分は特に苦手なんですよ。どうしても地の文が少なくなってしまう・・・。
色々と説明の無い単語等々ありますが、今後の話の中でやんわりと説明していこうと思ってます。
では駄文ではありますが今後ともよろしくお願いいたします。
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